作品集から私がいかにオオカミを愛しているのかよくわかると思いますが、なぜそこまで好きなのか、このページではそれがわかるようなオオカミの事実についてご紹介いたします!多少私見も入ってますが(笑)

 ~INDEX~
 1. オオカミは森を守る?!
 2. 「赤ずきん」はウソ?!
 3. 意外と知られていないオオカミの性質
 4. オオカミって何種類いるの?
 ●参考文献

 1. オオカミは森を守る?!

私たちが抱くオオカミのイメージってもっぱら悪いですよね。「赤ずきん」や「三匹の子豚」、「七匹の子ヤギ」、といった有名な童話でも、騙して相手を襲う狡猾で邪悪な動物として描かれています。事実牧畜を行うヨーロッパではオオカミによる家畜の被害が発生しており、オオカミを害悪視するのはそれが原因だといわれます。
しかし、それは人間側にとって都合が悪かっただけで、自然界ではオオカミは大事な役割を担っています。オオカミは森の生態系の頂点に立ち、アカシカやノロジカ、小動物などを獲物とします。オオカミたちがそういった生き物を捕食することで、森の生態系のバランスは上手く保たれています。また、オオカミはすぐれた嗅覚で獲物の僅かなにおいからその個体の体調を知り、病気にかかった個体を襲うので草食動物の群れの質が良く保たれると言われます。これは、オオカミの捕食により弱い個体が淘汰され、強い個体が子孫を残せるからです。
現在日本では、オオカミの絶滅やハンターの激減でシカが大増殖し、森の木々や農作物を荒して甚大な被害をもたらしています。
シカのような草食動物は、捕食者がいなければ際限なく数が増えるのです。食物連鎖のピラミッドって見たことあるでしょうか。生産者(植物)が一番下で、その上に生産者を食べる一次消費者(草食動物)がいて、その上に草食動物を捕食する二次消費者(肉食動物)がいるというのが基本構造です。上に行くほど数は少ないのです。ですから、シカとかの草食動物は放っておくとどんどん増えます。シカが増えることでクマも餌を失います。増えすぎたシカは木の皮まで食べてしまうのですが、これは人間で言うところの喉を切られたようなもので枯れてしまいます。そうなるとクマの餌となる木の実が減ってしまうのです。また木が枯れることで他の生き物の住処や隠れ場所がなくなります。ですから、オオカミといった捕食者は他の生物の生活の場を守るためにも必要不可欠なのです。
またシカだけでなく、サルの被害も出てますよね。山から下りてきて(何が面白くないのか)人にいきなり噛み付いてひどい怪我を負わせてるそうじゃないですか。あぁいうのだってオオカミがいたら退治(捕食)してくれますよwwww

ではなぜ日本ではオオカミは絶滅したのか、一説では狂犬病にかかったからといいますがそれは江戸時代のことです。
日本でオオカミが絶滅したのは明治時代です。原因は主に人間による乱獲でした。オオカミの餌となるような野生動物の乱獲が相次ぐことで、馬などの家畜のオオカミによる被害が出て駆除されたり、日本の西洋化が急速に進み、明治政府がオオカミを(文化的にそぐわない)悪い動物だとみなしてそれを広めたからです。

 2. 「赤ずきん」はウソ?!

ところで、オオカミに対するイメージといえば「人を襲って食べる」ですよね。赤ずきんちゃんはまさにその代表格です。子どものときにお母さんとかに読み聞かせしてもらったり自分で読んだりして、森の中には恐ろしい動物がいるもんだと震えあがったことでしょう。他にも狼男伝説があって、満月の夜に普段は大人しい男性が突然毛むくじゃらの化け物に変身して人間を貪り食うという設定はホラー映画の定番ですね。
しかし、それは本当でしょうか。現在の生態学で明らかになっていることは、「オオカミは人との接触を避ける」ということです。
皮肉にも、現在EUではオオカミの保護に全力を注いでいます。1. でご紹介したようなことをEU側は理解し、オオカミ害獣視の発祥の地で世界に先駆けてオオカミの保護を行っているのです。その上で、最近ドイツでもオオカミが復活してきているのですが、人身被害は起きていないどころか、オオカミがいることすら知らない住民もいます。ヨーロッパには原生林がほとんどなく、あるのは人工林です。
その上森の面積も狭く、田園地帯が広がっています。オオカミはそういった田園地帯や風力発電所にもいるそうなのですが、ほとんど目撃されないそうです。
では何故人を襲うと思い込まれているのでしょう。その理由はいろいろあると思いますが、やはりおおもとは家畜被害が起きているヨーロッパで、オオカミを害悪視する感覚の延長線上恐ろしく言われているのだと思います。もう一つは、野犬との混同だと考えられます。
実は日本でも、「オオカミが人を襲った」なんていう記録は古来からあります。例えば1.でも述べたような狂犬病。もともと日本になかった狂犬病が江戸時代に日本に持ち込まれ、多くの「狼」が人を襲った記録が残っています。またそれ以前、平安時代にさかのぼっても頻繁に「狼」が人里に来て子どもを捕食したという記録があります。
しかし、この内容は信ぴょう性が低いと言われます。というのは、オオカミの数は自然界において常に一定であるのに対し、よく似ている犬は常に人口の10%はいて放し飼いだったためです。今でこそ野良犬なんていません(と思う)が、少し前まではいましたよね。そのため身近であることや数のことを考えれば、人を襲うなら野犬である可能性の方がずっと高いと言えます。またオオカミの別称として「山犬」とも呼ばれることがありますが、これは「病犬」が語源ともされます。さらに、野犬は一応家畜ではあるため、家畜故に捕食者としての能力を過小評価される傾向があるそうです。家畜の被害はオオカミだけとは限らず野犬によるものもあるのですが、「犬」であるために野犬とは思われずに「狼」と思われがちなのだとか。
犬は長い間人とともに暮らしてきたため人に馴れやすい傾向にありますが、それは同時に人に対する警戒心が薄いということでもあるのです。だから人のしっかりとした管理下になければ人を攻撃する可能性は極めて高いのです。一方、人に馴れにくい野生のオオカミはそれだけ人に対する警戒心も強いため、人を襲う可能性はとても低いはずです。
だから野犬が人を攻撃したにもかかわらず報道上は「狼」と言い、実際のオオカミが濡れ衣を着せられているというのは十分考えられます。

ただし、じゃあ本当のオオカミは100%人を襲わないんですねというとそれは「ノー」です。
過去50年間でヨーロッパで明らかにオオカミによるとわかる人身被害は9件起きています。その原因は「人馴れ」と「狂犬病」です。日本の江戸時代のことはともかく、狂犬病にかかってしまえば事実オオカミは人を攻撃します。
また人がやたら餌付けをすることで人を恐れなくなったオオカミが人を攻撃するのです。1. で述べたようなサルを思い浮かべて頂ければわかりやすいと思います。
ということで、基本襲ってくることはないけれど適切な距離感が必要だということがわかっていただけたのではないでしょうか。

 3. 意外と知られていないオオカミの性質

さて、此処まで人とオオカミとの関わりについてざっと述べてきましたが、実は人類は、もっぱらオオカミと仲が悪かったわけではないのです。
ご存知のように、イヌの祖先はオオカミです。レトリバーのような大型犬からチワワみたいな超小型犬まで、その祖先は今から約1万年前に人に飼いならされたオオカミです。
オオカミは厳格な順位のある群れを持って生きています。この群れの事を英語ではパック(Pack)と呼びます。オオカミの群れは基本的に繁殖可能なオスとメスをトップに、その子どもたちや兄弟で構成されています。すなわち、家族で構成されています。それ以外でも、成長して群れから出たオオカミが仲間として加わったり、群れが合体する場合もあるなど、一口にオオカミの群れと言ってもバラエティに富んでいます。
このように、共存できると思われる相手に対しては仲間として認める性質がオオカミにはあります。そして、オオカミがイヌとなる過程では、人に飼われたオオカミがその人間を群れのリーダーとして認識してきたのです。現在でも、その過程を垣間見ることは出来ます。オオカミ保護のためにオオカミを飼育している施設などでは、飼育員がオオカミたちと戯れる姿が見られます。彼らはその人を群れのリーダーと認識し、出会えた喜びや一緒に遊べる幸せを全身全霊で表現しています。
しかし中には、この逆のようなやり方をとった人もいます。「狼の群れと暮らした男」の筆者であるショーン・エリス氏は、北米の大自然で体ひとつで野生のオオカミの群れに加わろうとした人物です。警戒心の強いオオカミたちに受け入れてもらうために、彼は一番立場の弱い一匹オオカミとして接しました。
オオカミの群れというのは基本力が正義です。力のある者ほど順位は高いというのが基本スタイルですが、実はそれだけでは群れは成り立たないというのも事実です。群れのリーダーや順位の高いオオカミには、力強さと同時に、仲間が認めるような優しさや誠実さが必要です。他の群れから加わった者や一匹オオカミから仲間として認められた者というのは、群れの中では最下位に近い順位です。しかし、群れの仲間はそんな彼らに生きるのに必要最低限の食事や寝る場所は与えてくれます。また、自分の立場に固執して相手を力でねじ伏せるようなことばかりするリーダーは敬遠され、群れから出て行ってしまうものもいます。逆にTPOを考えて争いを避けるような温厚なタイプは、下位の順位の者から慕われます。力がものを言うような社会であっても、やはり性格が一番重要なのかもしれませんね。

 4. オオカミって何種類いるの?

一口に「オオカミ」と言っても、何種類もいるんじゃないかと思われると思います。ヨーロッパオオカミやモンゴルオオカミ、アラスカオオカミからシンリンオオカミまで。果てはニホンオオカミというのもかつての日本にはいました。一体、オオカミというのは何種類いるのでしょうか。
実は、私たちが一般に考えるオオカミ(高度な群れ社会で暮らし、シカなどを狩る)というのは、すべて「ハイイロオオカミ(Canis lupas)」という1種類だけです。住んでいる地域や毛色、体格などによってさまざまな呼び名があり亜種とされています。「亜種」とは何か。一見「本種とは別」みたく感じられるかもしれませんが、実は同じ種の中で若干違うぞということです。「種」というは、互いが交配して子孫を残し、さらにその子孫にも繁殖能力があって、代々子孫を残し続けられる生物の事を言います。だから「亜種」というのは互いが交配したところで何の問題もありません。亜種レベルでの分類が難しくなる程度です。
長年ニホンオオカミは固有種だという説が有力でしたが、残されている毛皮や化石から抽出された遺伝子を解析したところ、ハイイロオオカミの仲間であると考えられています。同時期に絶滅してしまったエゾオオカミに比べると大陸から渡ってきた年代は古く、気候変動により小型化したと考えられていますが、少なくともハイイロオオカミの一種である可能性は高いそうです。

ところで、「オオカミ」と名のついた動物でもハイイロオオカミではない動物もいます。たとえば、タテガミオオカミという動物は全くの別種です。体格が違いすぎるだけでなく、生態や食性も異なります。別称「アカオオカミ」と呼ばれるドールも違います。学名をCuon alpinusといい、もっぱらアジアに生息しています。
また北米南部にも「アカオオカミ」と呼ばれてるイヌ科の動物がいます。ひとつは「Canis lufus」という学名で、氷河期にユーラシアから北米に渡ったCanis mosbachensis(カニス・モスバケンシス)という祖先から孤立して進化しました。そしてユーラシアに残ったものが現在のハイイロオオカミ(Canis lupus)になったのです。しかし一方、北米の「アカオオカミ」にはもうひとついて、Canis lupus lycaonと分類されているオオカミがいます。こちらは現在でも分類に議論が続いていて、ハイイロオオカミの1亜種とするか、Canis lufusのように独立の種とするかまだ定まっていません。
オオカミやコヨーテ、ジャッカルなどのイヌ科はそれぞれ別種とはされていますが交配は可能です。なので上記の北米の「アカオオカミ」について分類が難しいのは、あまりにも近縁過ぎて交配も可能なレベルだからかもしれません。

 ●参考文献

・「一般社団法人 日本オオカミ協会オフィシャルサイト」
〈 HTTP://japan-wolf.org/ 〉

・丸山直樹著(2012)『フォレスト・コールNo.18[特集]オオカミ復活についての疑問に答える最新Q&A』 2012年4月13日号
 一般社団法人 日本オオカミ協会

・『フォレスト・コールNo.19』 2013年6月15日号
 一般社団法人 日本オオカミ協会

・ブレット・ウォーカー著 浜健二訳(2009)
『絶滅した日本のオオカミ―その歴史と生態学―』 北海道大学

・ラガッシュ・C.-C.、G.ラガッシュ著 高橋正男訳(1989)『狼と西洋文明』 八坂書房

・「シリーズ 地球と生きる、オオカミとの戦い 2010年3月号 ナショナルジオグラフィック」
〈HTTP://nationalgeographic.jp/nng/magazine/1003/feature02/illustration/index.shtml〉

・中村一恵、樽創、大島光春著(1998)
『オオカミとその仲間たち―イヌ科動物の世界―』 神奈川県文化財協会

・ショーン・エリス、ペニー・ジュノ著 小牟田 康彦訳(2012)
『狼の群れと暮らした男』 築地書館

・渡辺一史著(2012)『北の無人駅から』P.93-190. 北海道新聞社

・「336回『一匹オオカミ 頂点への道!』ダーウィンが来た!生きもの新伝説」
〈HTTP://cgi2.nhk.or.jp/darwin/broadcasting/detail.cgi?sp=p336

・桑原康生著(2014)『オオカミの謎:オオカミ復活で生態系は変わる!?』 誠文堂新光社



Topへ戻る


inserted by FC2 system